歌物語161
早朝、コーヒーを入れる。豆の鮮度が落ちたせいか、膠のような味がする。一週間ぶりにメールをチェックする。緊急連絡が来てもこれでは何もならない。誰にも返事をしない。君のメールにも。
下向きに咲く寒桜 愛憎は分かちがたきと思いたれども
■註■短歌○シタムキニ サクカンザクラ アイゾウハ ワカチガタキト オモイタレドモ
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早朝、コーヒーを入れる。豆の鮮度が落ちたせいか、膠のような味がする。一週間ぶりにメールをチェックする。緊急連絡が来てもこれでは何もならない。誰にも返事をしない。君のメールにも。
下向きに咲く寒桜 愛憎は分かちがたきと思いたれども
■註■短歌○シタムキニ サクカンザクラ アイゾウハ ワカチガタキト オモイタレドモ
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年が明けたからといって、何変わるわけでもなく、相変わらずぐずぐずの生活をしています。気楽と言えば気楽なのですが、先のことを考えると居ても立ってもいられなくなるから、何も考えないようにしているのにすぎないのです。いつも年賀状ありがとうございます。今年もよろしくお願いします。冬の寒さが身に応えます。
すぐ止みてしまいし雨よ字の消えし路標のごとく茫茫と冬
■註■短歌○スグヤミテ シマイシアメヨ ジノキエシ ロヒョウノゴトク ボウボウトフユ
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奥秩父の雑木林を歩く。知り合いの子どもが虫好きで、クワガタを幼虫から育てたいというので、昔取った杵柄、一肌脱ぐことにした。知識はあるらしいが、汚れ作業の嫌いな親子は、冬なのに汗だくなって朽ち木を崩している私を眺めているだけで、自ら手を出そうとはしない。一日必死に頑張って何匹かとれればよいという世界なのに、それでは、こっちもかったるい。土の中からぞろぞろ出てきた、コガネムシの幼虫を、これぞノコギリクワガタとだまくらかして、早々に引き上げる。それでも、久しぶりに、落ち葉に覆われた、冬の雑木林を歩くのは気持ちがよかった。
日だまりのくぬぎ落ち葉に昨夜の霜いまだ残れる冬の遠足
■註■短歌○ヒダマリノ クヌギオチバニ キゾノシモ イマダノコレル フユノエンソク
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見知らぬ風景や人々。俺はその人々と一緒になって何事かしきりに叫んでいる。俺はコロシアムの聴衆であったようにも思えるし、デモの群衆であったような気もする。不分明な輝ける記憶。胃の上部が鈍く痛み続ける。一体だれの夢に紛れ込んでしまったのか。
脚折れの黒き栗毛の純血馬の禍々しき世をひとりかも寝む
■註■短歌○アシオレノ クロキクリゲノ ジュンケツバノ マガマガシキヨヲ ヒトリカモネン
・ 本歌=あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長長し夜を一人かも寝む(柿本人麻呂)
・ 「脚折れの黒き栗毛の純血馬の」は「禍々しき」を導き出す序詞。
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夜、押入にしまい込んである、古書を漁っているとき、初めてシミというやつにお目にかかった。昆虫図鑑では何度も見ていたので、すぐにそれだと分かった。管ビンに閉じこめて眺めると、体全体を覆う銀灰色の鱗が鈍く輝いて、こんなに美しい虫であったのかと、思わず見とれてしまった。人知れず、ひっそりと、古書を食いつつ生きるのも世離れしていて悪くはない。寿命を調べて見たが、手持ちの昆虫図鑑では分からなかった。たぶん、そんなことを調べる酔狂な人もいないのだろう。翌朝見ると、虫は跡形もなく消え失せていた。密封された容器からどのように逃げ出したのか、いくら考えても分からなかった。
抱朴子の饐えたる文庫に巣喰ひたる千年蠧魚のアボガドライス
■註■短歌○ホウボクシノ スエタルブンコニ スクイタル センネンシミノ アボガドライス
・ 抱朴子=東晋の葛洪(カッコウ)(二八四~三六三)の著。三一七年ごろ成立。不老長寿の仙術を解説した書。
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水の流るる音を聞きつつ待たむ。出立の不意の訪ひ。今、わが短歌を語らむとせば。
夜をこめて聴く幻想組曲 立ちのぼれ言霊の国家
■註■短歌○ヨヲコメテキク ゲンソウクミキョク タチノボレ コトダマノポリティア
・ 夜をこめて=まだ夜が明けないうちに。
○遅ればせながら明けましておめでとうございます。
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