歌物語174
オットピン飲んで、びっしと決めて、途中で花束買って、電車に乗る。あなたの待つ駅の一つ前で降りて、スターバックスで薄いコーヒー二杯飲んで花束は置き去りにして、元来た道を引き返す。携帯電話が何度か振動するが出ない。みんな私が悪いのです。でも理不尽なのはあなたの方。
捲土重来を期すも耐え難くたそがれ色の一反木綿
■註■短歌○ケンドジュウライヲキスモタエガタク タソガレイロノイッタンモメン
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オットピン飲んで、びっしと決めて、途中で花束買って、電車に乗る。あなたの待つ駅の一つ前で降りて、スターバックスで薄いコーヒー二杯飲んで花束は置き去りにして、元来た道を引き返す。携帯電話が何度か振動するが出ない。みんな私が悪いのです。でも理不尽なのはあなたの方。
捲土重来を期すも耐え難くたそがれ色の一反木綿
■註■短歌○ケンドジュウライヲキスモタエガタク タソガレイロノイッタンモメン
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お前のかみさんに泣かれるのが嫌で、焼香もそこそこに寺を出る。身の回りからポツポツと古い友達がおさらばしていく。
いかものの李朝の壺を押しつけて雲隠りにし莫逆の友
■註■短歌○イカモノノ リチョウノツボヲ オシツケテ クモガクリニシ バクギャクノトモ
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飲み出すとへべれけになるまでやめられなくなり、次の日の仕事しくじり、そしてまた夕ぐれてくだを巻く、そのくりかえし。勤めは首になり、女は逃げだし、あげくに血を吐いて、それでも飲んでます。
宿酔の激しき嘔吐繰り返しわがたそがれの実存主義
■註■
短歌○シュクスイノ ハゲシキオウト クリカエシ ワガタソガレノ existentialisme
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夕暮れはじらすようになずみながら、ようやく夜になるとランタンをめぐってヤマカミキリが激しい体当たりを繰り返す。
焦げ臭き飯盒のめし頬張りて川面を渡る螢みており
■註■
短歌○コゲクサキ ハンゴウノメシ ホオバリテ カワモヲワタル ホタルミテオリ
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元カノの元カレの元カノの友達が紹介してくれた家庭教師のバイト先の小学生が第一志望の私立中学に合格したお礼にと、その子の母親が渋谷のレストランに招待してくれた。三十代半ばの彼女は、昼間の酒が回ったらしく、次はカラオケへなどといって妙にしなだれかかってくる。カラオケは苦手なのでとやっとのこと辞退して振り切るように帰ったことを、元カノの元カレの元カノの友達に話したら、それは食いそこねましたねとバナナマンの日村みたいな顔をして笑う。それからしばらくの間ひとりになると何か損をしたような感じがまとわりついて離れなかった。
怒張せるわがメガホンの雄叫びもかの逸脱の日々に紛れて
■註■
短歌○ドチョウセル ワガメガホンノ オタケビモ カノイツダツノ ヒビニマギレテ
・日村:お笑いコンビ「バナナマン」のツッコミ担当。「子供の頃の貴乃花」の物まねでブレイク。
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わが師の鬱屈とした心の有所がわかっていたのは、たぶん私だけだったろう。師の従者として仕え、時には代作もし、そして一身に愛され、そんな日々を重ねるうちに、師も老い、私にも新たな転機が訪れようとしていた。私が旅立つ日、師ははなむけに人を集め、上機嫌に言祝ぎ、したたかに飲んだ。私は始終うつむいて、涙を流しながら、けれども心は遠い海の国を思っていた。
奈良の廃都に降り込められてへべれけの旅人の背をさする夕暮
■註■
短歌○ナラノハイトニ フリコメラレテ ヘベレケノ タビトノセナヲ サスルユウグレ
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ときおり天にヒバリが鳴く。北のリハビリ病院で僕は一日ラジオを聞いていた。月並みにいえば馬車馬のようなわが半生(ちょっと古いか)。そいつが何か人ごとのように思えて、かといって今の自分に納得もいかず、けれどもそんな心のありようが、なぜかその時は快かった。
わが胸の荒野に一筋よぎりたる永久に列車の行かざる鉄路
■註■
短歌○ワガムネノ コウヤニヒトスジ ヨギリタル トワニレッシャノ イカザルテツロ
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邪悪なるわが心底をあやし、なだめ、封じ込め、人に悟られぬようによろいつつ、人に紛れて飲むマクドナルドの100円コーヒー。
眠り鮫潜める闇の底いよりあまた泡の生まれ出でたる
■註■
短歌○ネムリザメ ヒソメルヤミノ ソコイヨリ アマタミナワノ ウマレイデタル
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穴のあいた自転車のチューブ、錆びたボルト、剥がれた靴底、ひび割れたプラスチックの筆箱、ぼろぼろの電気カミソリ、虹色のDVD、空をうつす水溜まりに漬かった段ボール。
くたびれた学生鞄放り投げ寝転べば空があるばかりなり
■註■
短歌○クタビレシ ガクセイカバン ホウリナゲ ネコロベバソラガ アルバカリナリ
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ヒトという不条理な皮袋が東京都推奨の45リットルのポリ袋にいくつも詰め込まれて、街外れの集積所に捨てられていた。
新大陸発見記書き継ぐそのペン先の凝りたる血よ
■註■
短歌○シンタイリクハッケンキカキツグソノペンサキノコゴリタルチヨ
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