歌物語174
オットピン飲んで、びっしと決めて、途中で花束買って、電車に乗る。あなたの待つ駅の一つ前で降りて、スターバックスで薄いコーヒー二杯飲んで花束は置き去りにして、元来た道を引き返す。携帯電話が何度か振動するが出ない。みんな私が悪いのです。でも理不尽なのはあなたの方。
捲土重来を期すも耐え難くたそがれ色の一反木綿
■註■短歌○ケンドジュウライヲキスモタエガタク タソガレイロノイッタンモメン
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オットピン飲んで、びっしと決めて、途中で花束買って、電車に乗る。あなたの待つ駅の一つ前で降りて、スターバックスで薄いコーヒー二杯飲んで花束は置き去りにして、元来た道を引き返す。携帯電話が何度か振動するが出ない。みんな私が悪いのです。でも理不尽なのはあなたの方。
捲土重来を期すも耐え難くたそがれ色の一反木綿
■註■短歌○ケンドジュウライヲキスモタエガタク タソガレイロノイッタンモメン
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早朝、コーヒーを入れる。豆の鮮度が落ちたせいか、膠のような味がする。一週間ぶりにメールをチェックする。緊急連絡が来てもこれでは何もならない。誰にも返事をしない。君のメールにも。
下向きに咲く寒桜 愛憎は分かちがたきと思いたれども
■註■短歌○シタムキニ サクカンザクラ アイゾウハ ワカチガタキト オモイタレドモ
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もっと綺麗に別れられるはずが、ちょっとした行き違いでぐずぐずになってしまいました。もともと訳有りであったとはいえ、第三者まで介入してきて、針の筵の年の瀬です。仕事している時が一番心が落ち着くなんて…。おかげで珍しくノルマ達成、やればできると上司からほめられたりして。
赤き薬包紙開くとき舞い上がるパウダースノー死んだっていい
■註■短歌○アカキヤクホウシ ヒラクトキ マイアガル パウダースノウ シンダッテイイ
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いじりほじりくじりいじりねじりかじりにじりかじりまじわる。
蟾蜍路上に潰れ寂しけれ眼球譚のその後のこと
■註■短歌○ヒキガエル ロジョウニツブレ サビシケレ ガンキュウタンノ ソノノチノコト
・ 眼球譚=バタイユ著(1928)
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ふいに起こるお前の感情の激しい高まりと、その後の沈黙に耐えかねて、おれはいつものように家を飛び出した。そうして、公園のブランコに揺れながら、気持ちの治まったお前が何気ない顔をして、おれをむかえに来るのを待っていた。けれどもその日お前はいつまでたっても、おれの前に姿を現すことはなかった。くすみだしたクヌギの葉越しに夕日がまぶしくおれを照らし、一枚の葉が予兆のごとくおれに落ちかかる。
秋深し蟻の穴より捨てられし働き蟻とこおろぎの脚
■註■短歌○アキフカシ アリノアナヨリ ステラレシ ハタラキアリト コオロギノアシ
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誰にも話したことはないのだが、楽器の出来る女性は苦手なのだ。育ってきた環境の違いみたいなものが感じられて、コミュニケートするのがめんどくさくなるらしい。当然、演奏会などというものにも、ほとんど無縁で、誘われたからと行って、重たい腰がそう簡単に上がるはずもない。それで、eメールではなく、封書で丁重に断りの手紙を出したのだが、当然こちらの真意など分かるはずもなく、それなら、今度の日曜日に西村由紀江のコンサートがあるからそれに是非などと、やはり封書で相手は言ってくる。
やわらかに紫苑は咲きぬ添えられしピアノ教師のへたくそな短歌
■註■短歌○ヤワラカニ シオンハサキヌ ソエラレシ ピアノキョウシノ ヘタクソナウタ
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十年付き合った男と昨日別れた。結婚迫ったわけでもないし、このままでいいと思っていたのだが、心の中、見透かされたのかも知れない。
ゴスペルをそんなにかなしく歌うなよ残されたって平気なんだよ
■註■短歌○ゴスペルヲ ソンナニカナシク ウタウナヨ ノコサレタッテ ヘイキナンダヨ
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叔父は、私にだけ、彼の女装趣味を打ち明けた。人付き合いが苦手で、短歌など作っている私に、同じ匂いを嗅ぎ取ったのかも知れない。迷惑な話ではあったが、叔父の話は面白かった。古事記の中で、倭男具那が、熊襲建を殺したときの女装姿、それが彼の究極の理想らしい。最近は、若い友達が出来たらしく、以前のようにメールも来なくなった。
われを欺き身に浴びる悲しみの針千本、祭は女になりて紛れん
■註■短歌○ワレヲアザムキ ミニアビルカナシミノ ハリセンボン マツリハオンナニ ナリテマギレン
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ルービックキューブの、六面の揃え方を書いたメモが、どこかに行ってしまって、もう一度教えてもらいたいのですが…。
ホットミルクの薄膜を吹くさざ波の夜に残されし伝言を聞く
■註■
短歌○ホットミルクノ ウスマクヲフク サザナミノ ヨニノコサレシ デンゴンヲキク
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ブックセンター・リブロの前でさよならを言うために買う寺山修司
雨の多い10月。待ち合わせ時間まではまだ少しある。
■註■
短歌○ブックセンター・リブロノマエデ サヨナラヲ イウタメニカウ テラヤマシュウジ
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部屋の隅で、膝を抱えて、一夜を明かす。別れた男も、死んだ父も、みんな嫌いだ。
しんしんと闇は巣穴を漏れ出でてインコは孵らざる卵抱く
■註■
短歌○シンシント ヤミハスアナヲ モレイデテ インコハカエラザルタマゴダク
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十月だというのに、海はサーフィンを楽しむ若者達で賑わっていた。まだ続きがあると思っていた物語が不意に途切れて、わたしは当てのない休日を一人、海で過ごした。
〈わたし〉から噴き出す海の群青の天いっぱいに満ちるかなしみ
■註■
短歌○ワタシカラ フキダスウミノ グンジョウノ ソライッパイニ ミチルカナシミ
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夢占の女に頼んで盗んだ夢の、味気ない結末をなじりに、その辻を訪ねると、そこはススキばかりが風に騒ぐ、何もない荒野だった。わたしは少々不気味になって、あわてて町に引き返したのだが、その時、買ったばかりの煙草入れを落としてしまった。
眉墨は濃くきわやかに引きつべしお前の夢に紛れる夜の
■註■
短歌○マユズミハ コクキワヤカニ ヒキツベシ オマエノユメニ マギレルヨルノ
・ 引きつべし=引くのがよい。強意の助動詞「つ」終止形+適当の助動詞「べし」終止形
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長すぎた二人の、別々の道のために。
うつろいて刻む七曜、色もなく果てしことのみ知る名無し指
■註■
短歌○ウツロイテ キザムシチヨウ、イロモナク ハテシコトノミ シルナナシユビ
・ 名無し指=くすりゆび。
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もう生きては会えないあなたが残していった古い詩集に挟まれたままの落ち葉のしおり。
曼珠沙華祈りのごとく燃えければ再来を告げ別れ行くのみ
■註■
短歌○マンジュシャゲ イノリノゴトク モエケレバ サイライヲツゲ ワカレユクノミ
・再来=再びこの世に生まれ出ること。
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別れた男から久方ぶりに文が届く。
秋野遙かに汝を思えば服わぬ成りて合わざる一処あり
返しはせず。
■註■
短歌○シュウヤハルカニ ナレヲオモエバ マツロワヌ ナリテアワザル ヒトトコロアリ
・服わぬ=いうことをきかない。
・成りて合わざる一処=男性自身。(古事記上巻)
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もう十分過ぎるくらい、夢は見てきましたから。
誰かわたしと九月の雨の暁に死んでください花一匁
■註■
短歌○ダレカワタシト クガツノアメノ アカツキニ シンデクダサイ ハナイチモンメ
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激しい雨風かようやくおさまった暁の頃。草むらの虫たちの声が、やかましいくらいに聞こえてくる。別に誰が悪いわけでもない。
ふしだらといわれ淋しい肉叢を白磁のごとく慰めていた
■註■
短歌○フシダラト イワレサビシイ シシムラヲ ハクジノゴトク ナグサメテイタ
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雨まじりの激しい風が窓を打つ。何かに取りつかれたようにおまえを抱く。
ゆっくりと締め落とされてゆくときもおまえは遠い眼差しをして
■註■
短歌○ユックリト シメオトサレテ ユクトキモ オマエハトオイ マナザシヲシテ
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何という種類の猫か知らないけれど、女友達に携帯の待ち受け画面を見せられ、今度見に来いと誘われる。日曜日は法事だからと、嘘ついて断わる。
万力で潰したような猫の顔誰かに似たりおかしかりけり
■註■
短歌○マンリキデ ツブシタヨウナ ネコノカオ ダレカニニタリ オカシカリケリ
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任された仕事が予定通り行かず、残業が続いたことと、それに伴うストレスの蓄積、不規則な食事、酒の飲み過ぎ、睡眠不足。やっと取れた休みも一日家で寝ているわけにも行かず、朝から腰に違和感を感じていたが、渋谷で待ち合わせて、食事して…。あげくのはてに。
椎間板あたりの痛み感じつつ抜き差しならぬままに果てゆく
■註■
短歌○ツイカンバン アタリノイタミ カンジツツ ヌキサシナルヌ ママニハテユク
・ 抜き差しならぬ=蛇足だが、「どうにもならない」という意味と「痛くて交合ままならぬ」という意味が掛かっている。
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強がってみたところでしょうがない。
一合は夢、二合は現、飲み干せば単に寂しい私が一人
■註■
短歌○イチゴウハユメ、ニゴウハウツツ、ノミホセバ タンニサビシイ ワタシガヒトリ
・ 一合は夢=「一期は夢」(人の一生は夢のようなもの)が掛けられている。
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成り行きのたった一度の逢瀬でしたが。
拾いたるこうもり傘を忘れたるそんな別れと慰めおれど
■註■
短歌○ヒロイタル コウモリガサヲ ワスレタル ソンナワカレト ナグサメオレド
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生きるとは悲しき所行死一倍の金拵えて女を口説く
何であんな女に熱を上げていたのか、今ではばからしくって、思い出したくもないのだが、駆け落ちして、別れて、借金取りに追われて、住民票もそのままに、その日任せの浮き草暮らし。自業自得と言えばその通りだし、気楽と言えば気楽なのだが、情け無いことに居直るほどには、まだ悟り切れていない。
■註■
短歌○イキルトハ カナシキショギョウ シニイチバイノ カネコシラエテ オンナヲクドク
・ 所行=行い。ふるまい。
・ 死一倍=親が死んで遺産を相続したら、元金を二倍にして返すという借金の約束。ここでは、無理な借金くらいの意味で使われているか。
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一人暮らしにも随分慣れてきました。することもない休日の一日は、がらくたや君の置いていったものを整理しています。君の探していたCD出て来ました。今度送ります。
色褪せし古き写真を焼きにけり鹿尾菜煮返し飲み直しけり
■註■
短歌○イロアセシ フルキシャシンヲ ヤキニケリ ヒジキニカエシ ノミナオシケリ
・ ~に・けり=~してしまったよ。完了の助動詞「ぬ」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の終止形。
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あなたと別れて半年、夕暮れはいつも気だるくて、友達に打つたわいなきメール。
とりどりに傘開く街去りがたく人待ち顔に珈琲を飲む
■註■
短歌○トリドリニ カサヒラクマチ サリガタク ヒトマチガオニ コーヒーヲノム
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人に告げることも出来ずに、いつもうつむいている、わが臆病。
あえかなる愛執ならむ 深海の游漁の鰓静かに開き
■註■
短歌○アエカナル アイシュウナラン シンカイノ ユウギョノアギト シズカニヒラキ
・ あえかなる=形容動詞「あえかなり」の連体形。かよわく、たよりないさま。
・ 愛執=愛着。愛するものにとらわれ、心が離れないさま。
・ ならむ=「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形、「む」は推量の助動詞の終止形。 …だろう
・ 游漁=泳いでいる魚。
・ 鰓(あぎと)=魚のえら。
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なぜ私が今、生まれ故郷から遠く離れたこの島で、あなたと暮らしているのか、めぐり合わせというのでしょうか、不思議でなりません。仕事も恋も人間関係も何もかもうまくいかなくて、頼る人もなく、どうしていいか分からなかったとき、何の気なしに入ったライブハウスで、私はそれまでとは違う自分をみつけました。
「運命の輪」というタロット引きし時 不意に音叉が共鳴りをする
■註■
短歌○ウンメイノワトイウタロット ヒキシトキ フイニオンサガ トモナリヲスル
・ タロット=トランプの前身。切札22枚と56枚のカードの計78枚一組。現在は占いにもっぱら用いられる。
・ 共鳴り=共鳴。
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言葉も行為も私を充たしはしない。陰鬱で、馬鹿馬鹿しくて、湿っぽくて、ささくれだった、私の孤独。
抱かれし時 月光に曝されし灰色の荒野を見てしまいけり
■註■
短歌○イダカレシトキ ゲッコウニ サラサレシ ハイイロノコウヤヲ ミテシマイケリ
・ 一、二句は句またがりになっていて、定型をはずしている。四句も9音で字余り。
・ し=「抱かれし」「曝されし」の「し」は過去の助動詞「き」の連用形。 …た
・ けり=詠嘆の助動詞の終止形。
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猫という黒き獣膝に抱き明日を語る女と過ごす
その人はいつも遠くを見つめながら、気のない相づちを打つ僕を前に、楽しげに話し続けた。退院はしたものの、病気はいつまた再発するか分からなかった。話は一方的で、とりとめのない、無邪気なものだった。退屈な人生…。僕は早く、マラルメの続きを読みたかった。
■註■
短歌○ネコトイウ クロキケダモノ ヒザニダキ アシタヲカタル オンナトスゴス
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別れてしまったことが、こんな結果をもたらすなんて、その時は思いもしなかった。わたしの心の空洞に、たとえ何人の男が紛れ込もうと、なくしたものは戻りはしない。
あまつさえ淋しき日々にまた一つあなたのような罌粟が咲きます
■註■
短歌○アマツサエ サビシキヒビニ マタヒトツ アナタノヨウナ ケシガサキマス
・ あまつさえ=その上に。そればかりかさらに。
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おまえが、ばかに機嫌のいい日曜の朝。そういえば、一日休みが取れるなんて久しぶりだ。それなのに、オレは二日酔いと、どっと出た仕事疲れで、さえない顔してソファーに寝そべり、新聞を読んでいる。鏡に向かうおまえのあどけなさの残る横顔を気にしながら。
ぬばたまの髪梳くときも結うときも花やいでいるわけもないのに
■註■
短歌○ヌバタマノ カミスクトキモ ユウトキモ ハナヤイデイル ワケモナイノニ
・ ぬばたまの=黒、髪、夜、夢などにかかる枕詞(まくらことば)。
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風の行方を問えばかなしも汝が胸の海を漂うわれにしあれば
おまえの胸に耳をあて、おまえの鼓動を聞いている。規則的に打つその響きに、いつの間にかオレは眠る。海の夢を見た。オレ達はどこへ流されていくのだろうか。風に聞くしかない。
■註■
短歌○カゼノユクエヲ トエバカナシモ ナガムネノ ウミヲタダヨウ ワレニシアレバ
・ も=詠嘆の終助詞 …なぁ。…ことよ。
・ 汝=「な」、「なれ」、「なんじ」と読む。この歌では「ながむねの」と五音で読むために「な」。意味はおまえ。短歌の世界では基本的には恋人をさす。
・ ~に・し・あれ・ば=断定の助動詞「なり」の連用形+強意の副助詞+ラ行変格活用の動詞「あり」の已然形+接続助詞、順接の確定条件、原因・理由を表す …私であるから
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月の砂漠に駱駝をなくし道行はいよよ愛しくなりにけるかも
月の砂漠を旅した王子と姫の先行きを思えば、なぜかまた、一途な恋などをしてみたくなる。
■註■
短歌○ツキノサバクニ ラクダヲナクシ ミチユキハ イヨヨカナシク ナリニケルカモ
・ 月の砂漠=この歌の本歌は童謡「月の沙漠」(作詞:加藤まさを 作曲:佐々木すぐる)。
・ 道行=相愛の男女が旅すること。歌舞伎では、かけおちだったり、心中にいたるケースが多い。
・ いよよ=副詞 いよいよ。ますます。
・ 愛しく=「かなしく」と読む。形容詞「愛し」の連用形。「愛し」は相手に対する抑えきれないほどの切なさを表す言葉。「愛し」は「悲」、「哀」に通じる。
・ …に・ける・かも=完了の助動詞「ぬ」連用形+詠嘆の助動詞「けり」の連体形+詠嘆の終助詞「かも」 ~てしまったことだなぁ。 昔、斎藤茂吉などが用いてアララギではやった言い方。いわゆる万葉調の一種。「なりにけるかも」は万葉集では七首の歌で用いられている。
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